モデルハイ・バヌヌ単独会見 朝日新聞朝刊(2)(7)=インタビュー:定森大治(エルサレム)

イスラエル南部ディモナにある核兵器施設に9年間核管理部門で技術者として勤めていたバヌヌ氏が、1986年に核弾頭の製造工場内部の写真60枚を盗み撮りし、英国紙サンデータイムスなどに機密情報を暴露し、国家反逆罪で18年間の刑に服した。この時点で、100発以上の核弾頭を保持していることが報じられた。今年4月、刑期を終え、米国へ脱出する予定だったが、イスラエル最高裁により「出国禁止と外国メディアとの接触禁止」の措置がとられた。身柄は、エルサレムのセント・ジョージ聖堂のライエ・アブ・エルアサル主教の保護の下にある。バヌヌは、ユダヤ教から改宗し、祖国に二重の意味で「反逆」した。

【会見内容概要】
①暴露のきっかけは、チェルノブイリ原発事故。ディモナでも同様の事故が起こることを憂慮した。
②核戦力を持つことで、アラブ諸国よりも優位に立とうとすることがいかに危険なゲームかを世界に訴えたかった。
③南アの核開発は、イスラエルとの技術協力で進められた。
④サンデータームスの前に、ニューズウィーク誌にも無条件で情報提供したが、記事は掲載されなかった。
⑤獄中ではひどい扱いを受けた。安らぎはベートーベンの「フィディリオ」などをラジオで聞くことだった。自伝執筆も可能だったが、検閲があるのであきらめた。
⑥米国やドイツのメディアは、当局を怒らせないように配慮している。英国BBCは会見テープをこっそり持ち出して放送した。自由に発言したいが、政府は未だ「危険人物」としている。次の最高裁の決定を待っている。