NHK-ETV/ETV特集「バチカンと現代世界」

加藤周一 (評論家)、西谷修東京外国語大学大学院教授)
※エキュメミズム、「場」としての教皇、「第三者」としての教皇、武力は「当事者」倫理する力は「第三者
PD:草川康之 熊田佳代子 EP:安斎尚志

暫定政府は発足したものの、いまだ混乱が続くイラク。世界に吹き荒れる市民を巻き込んだ無差別テロと報復の嵐。9. 11同時多発テロ後、世界の不安と恐怖は増幅している。唯一の超大国アメリカがテロとの戦いに邁進(まいしん)する中、民族・宗教を越えた対話をよびかけ、国際社会に「殺すな」という平和のメッセージを送り続けている存在がある。世界11億人の信者を擁するローマ・カトリック教会の総本山、バチカンとそのリーダー、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世だ。教皇は東西冷戦の最中、強力な指導力を発揮して出身国ポーランド民主化運動を支援し、ソビエト共産主義の崩壊と冷戦の終焉(しゅうえん)に大きな影響力を与えた。歳を重ねるにつれ世界情勢にますます積極的に関与し、去年はイラク戦争を回避しようと、アメリカ、イラク、国際社会に異例とも言える直接的な働きかけを行った。結局戦争は止められなかったが、6月にはブッシュ大統領が訪欧のスケジュールを繰り上げてまでわざわざ教皇を訪ね、その苦言に率直に耳を傾ける姿を示すなど、アメリカでさえ無視できない大きな存在となっている。  84歳になり、重い病をおしてまで反テロや平和を訴える「神の代理人ヨハネ・パウロ2世の姿と、千数百年の歴史を持つバチカン現代社会にどう向き合ってきたかを見ながら、21世紀、アメリカ的価値観の前に立ちはだかったもう一つの価値観を考える。

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