「華氏911」だけじゃない!豊作ドキュメンタリー(夕刊フジ)

 「とにかくてんてこ舞いです」というのは、「華氏911」を配給するギャガ・コミュニケーションズの宣伝担当者。「劇映画に比べ、セリフも膨大で、字幕製作が大変です。加えて、マスコミや映画ファンからの問い合わせが頻繁で、公開前からこんなに話題になる作品は初めて」という。
 米国の銃社会を批判したムーア監督の前作「ボウリング・フォー・コロンバイン」は、ドキュメンタリーとしては異例の興行収入5億円を記録。全米2000スクリーンで公開された「911」は1億ドルの興収を記録して、期待は高まる。「国内150公開で、興収2ケタは固い。20億円も可能か…」(洋画配給関係者)。
 一方、「911」から約1カ月遅れ、本当の9月11日に公開されるのがやはり米政権の裏側を描いた「フォッグ・オブ・ウォー」(エロール・モリス監督)。ケネディ−ジョンソン政権下で国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏(88)の告白とベトナム戦争時の映像を交えて、その時代を解明したものだ。「太平洋戦争では東京大空襲など日本空爆に関与し、米ソ冷戦の最も厳しい時代に44歳で史上最年少の国防長官になったマクナマラ氏ならではの歴史的発言が収められています。日本への空爆ベトナムの北爆へも今だからこそ明かせる、彼の否定的見解など見ごたえは十分」(宣伝担当者)同作は話題性では「華氏911」に及ばないが、「反ブッシュ運動を行う米民主党系の団体が、モリス監督にCMの製作を依頼するなど、ある意味ではムーア監督以上に現政権を否定するのがモリス監督」(同)とか。
 熱いドキュメンタリー・実録映画はこれだけではない。別表のとおり、戦争や事件を描くだけでなく、音楽、バレエなどアートや自然をテーマにしたものなどバラエティーに富む。「ムーア監督作品のヒットで、昨年から硬派な作品でも観客を呼べると業界では見ています。この傾向はしばらく続くでしょう」(業界アナリスト)ひと味違った映画もまた面白そうだ。

【この夏公開される主なドキュメンタリー・実録映画】

タイトル       内容             公開日

永遠のモータウン   伝説のレーベル支えたバンド  公開中 
ハナのアフガンノート 13歳の少女が撮影現場を記録 公開中 
午後の五時      アフガン女性の現実に迫る   公開中 
リヴ・フォーエヴァー 90年代の英ロック界を解く  公開中 
炎のジプシーブラス  東欧の寒村に驚異のバンドが  公開中 
ベジャール、バレエ、リュミエール 天才振付家ベジャールに迫る 公開中
ディープ・ブルー   知られざる「海の世界」描く 公開中 
バレエ・カンパニー  実在のバレエ団の厳しい世界 公開中 
エルヴィス・オン・ステージ 伝説のライブを再編集で構成 公開中 
三浦和義事件     もうひとつのロス疑惑の真実 公開中
らくだの涙      ゴビ沙漠で暮らす遊牧民の姿  8/28
フォッグ・オブ・ウォーベトナム 戦時の米政権の深部 9/11<<